銅とリサイクル
リサイクルの重要性
銅は鉄とともに人類が最も古くから使ってきた金属ですが、それは双方とも酸化物が炭素で容易に還元でき、大昔の製錬技術で金属がとれたからです。し かし資源の豊富さは大違いで、鉄はクラーク指数(地球の表面より地殻16kmまでの岩石の中の元素量を100分率で示したもの)4位なのに比べ、銅は新金 属のチタン、ジルコニウム、バナジウムより少なくて、クラーク数25位、0.01%でむしろ希少金属の方に入ります。
従って、資源的に多い鉄やアルミ以上に、銅は使い捨てにできる金属ではなく、何度も回収再利用してゆかねばなりません。
銅はリサイクルの優等生
製品化を進めていく過程で発生する不要材料や製品として使用された後に廃品となって集められた銅は、スクラップ、すなわちくずとして回収し、元にもどして原料として再利用することは昔から行われてきています。それには、スクラップの発生場所と内容も関係する他、どこへどのようにして原料として戻してくるか経路も問題となり、当然、流通機構も加わります。銅や銅合金は価値が高く、発生元から集荷するリサイクル業者、その品質によって段階的に使用する利用者それぞれで効率的に循環しており、正にリサイクルの優等生です。
銅及び銅合金リサイクル原料分類基準
JISH2109「銅くず及び銅合金くず分類基準」は2006年2月20日にJISH2109:2006「銅及び銅合金リサイクル原料分類基準」として、現状の取り引きとの整合を図るべく改正されました。くずからリサイクル原料への呼称変更に伴い各種類毎の名称も使途に応じた変更がなされたほか、品質及び形状別の区分も現状に即し58種類から32種類に整理された。銅系リサイクル原料は、発生場所の違いによりリターン材(板・条・棒・線・管などの切れ端や、打ち抜きの残 りのように加工工程中に発生したもの)と故銅(本来の用途からはずれたもの、製品になって使用され何年か経ってリサイクル原料となり回収されたもの)に分かれます。
世界的に流通する名称としては米国のISRIが有名です。
銅及び銅合金リサイクル原料の流れ
海外から輸入した銅精鉱は国内製錬所で品位99.96%以上の電気銅に生産され、この電気銅から電線メーカーが電線を生産、伸銅メーカーは亜鉛など他の合金元素を混ぜるなどして溶解し、これを圧延・押出・引抜加工して伸銅品を製造します。また鋳物メーカーは銅や銅合金鋳物生産に使用します。これら電線や伸銅品などの加工品は電力会社、電気部品メーカー、建設業者、自動車部品メーカーなどに販売されますが、部品加工段階で発生したくず、いわゆる新切などは、電線や伸銅メーカーにそのまま戻されて、ほぼ100%が原料として再利用されます。廃電線もほぼ100%がリサイクルされ、ナゲット処理などが行われて、純良なものは電線メーカーと伸銅メーカーに、メッキなどがある物は伸銅メーカーや鋳物メーカーが使用します。
伸銅品由来の市中から発生するリサイクル原料のうち、空調関連の熱交換器やバルブ、ガス機器などまとまったものは伸銅メーカーや鋳物メーカーが使用しますが、微細なものや他元素とミックスされた小さな電子部品では回収不能なものもあります。また自動車に使用された伸銅品を含む部品はシュレッダー処理され、ミックスメタルとして中国をはじめ海外に輸出される例も見られます。なお、電線メーカーや伸銅メーカーでそのまま原料として使用できない銅の含有量が低いものや、異物・異材を含むものは銅製錬所の自溶炉などで処理されます。