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平成24年の伸銅業における安全活動と安全成績

平成24年の伸銅業における安全活動と安全成績

日本伸銅協会 安全委員会

(Ⅰ)はさまれ・まきこまれ災害撲滅運動

1.はじめに

日本伸銅協会・安全委員会は、伸銅業における労働災害撲滅を目的とした活動を計画的に推進するため、昭和31年に設立された。昭和41年からは各年毎に労働災害防止計画を策定し、重点方針を設けることで、業界一体となった活動を実施してきた。安全ポスターの定期的な配布や安全標語の募集・安全クイズの実施等を通じて安全啓蒙を行い、地区の研修会や交流会などによる安全意識の向上も進めてきた。

会員各事業所では各年の重点方針を基に、それぞれの実情に合った活動を展開し、また対策を講じることにより、伸銅業の災害件数の減少を実現してきた。

休業災害の件数と災害度数率の推移を見ると、初めて重点方針を設けた昭和41年には543件の休業以上の災害が発生したが(度数率9.72)、昭和55年には136件(3.83)、平成元年65件(2.18)と著しい改善を示した。その後も着実な減少傾向を示し、平成21年には、10件(0.62)までの減少を達成するに至ったが、平成22年は、残念にも死亡災害が1件(1名)発生し、また休業以上の災害発生件数も28件(1.58)と前年の3倍近くにまで達した。平成23年も、死亡災害が2件(2名)発生し、休業以上の災害発生件数も27件(1.58)と前年とほぼ同じ水準に止まった。

平成23年の休業以上の災害報告を振り返ると、依然として「はさまれ・まきこまれ」災害の比率は高く、全体の約50%を占めている。機械と作業者が近接して行なう作業が多く残っている伸銅業では、「はさまれ・まきこまれ」災害に繋がる危険性が高くなる。

こうした背景の中、安全委員会では、平成23年より平成16年度以来となる「はさまれ・まきこまれ災害撲滅運動」を安全重点方針として取上げたが、平成24年も引き続き「はさまれ・まきこまれ災害撲滅運動」を取り上げるとともに、「設備停止による安全確保の実施と指差呼称の徹底」を最重点推進実施事項として災害撲滅運動を展開することとした。

以下に、平成24年の安全活動並びに運動の成果について報告する。

2.年度スローガン

トラブル時手を出す前にまず停止! 危険を予知して皆で防ごう

はさまれ・まきこまれ

3.実施事項

この運動を進めるに当り、年初に実施要領を作成し,以下を実施した。

1)主唱者は、運動のポスターを作成し年間スローガンとして各事業所へ配布する。

2)主唱者は、安全標語の募集を行い、優秀作品を選び表彰する。

3)主唱者は、安全クイズを出題し安全活動への啓蒙に当たり、その正解者には抽選により賞品を出す。

4)主唱者は、「はさまれ・まきこまれ災害撲滅運動」を目的とした研修会・見学会を開催する。

5)各地区研究会では、「はさまれ・まきこまれ災害撲滅運動」を目的とした、研修会・交流会を開催し,同運動を推進する。

6)各事業所では、この運動を実施する主旨を全職場に徹底し、災害防止対策を実施する。

4.年間の月間安全スローガン

年間を通し時節に応じた月間安全衛生スローガンを選定し、年7回のポスター製作により各会員企業の事業所に配付し意識高揚に努めた。

1)1月/2月  新年度重点方針徹底月間

トラブル時手を出す前にまず停止!危険を予知して皆で防ごう

はさまれ・まきこまれ

2)3月/4月  教育訓練月間

新人に教える時がいいチャンス 初心にかえって模範作業

3)5月/6月  安全意識高揚月間

ゼロ災への決意と努力 ルール遵守は社員の責務 めざそう
安心・安全職場

4)7月/8月  夏期健康管理推進月間

暑い夏 一に給水 二に睡眠 健康管理で無災害

5)9月/10月 衛生対策推進月間

心とからだの健康チェック みんなで進める健康管理

6)11月  はさまれ・まきこまれ災害撲滅月間

異常処理 あせるその手が挟まれる ゆとりをもって一呼吸
基本に従い安全作業

7)12月  年末災害撲滅月間

今一度 ゆるむ気持ちを引き締めて 笑顔で迎える年末年始

5.安全クイズの実施

伸銅業に従事する全労働者の安全意識の高揚を目的に、日本伸銅協会の全会員全従業員約9,000名を対象にした「安全クイズ」を実施した。 応募総数は5,815通に達し、応募率 64.4%と高い参加率を維持することが出来、安全啓蒙の手段として効果的であると考えられる。

応募総数のうち、正解数は5,697通(正解率98.0%)で、正解者の中から600名を抽選し、賞品(クオカード)を贈呈した。

6.安全標語の募集

はさまれ・まきこまれ災害撲滅運動に役立ち、全員での安全意識の高揚を図るため、伸銅業従事者を対象に以下の観点の「安全標語」の募集を行った。

  1. 不安全行動やヒューマンエラー防止に役立つもの
  2. KYTや指差呼称の実施に役立つもの
  3. 5Sの実施に役立つもの

選考は、全国8地区の伸銅業安全衛生研究会より推薦された130点の第一次選考作品の中から、優秀作品55点・佳作74点を選考し、優秀作品には表彰状と賞品を、佳作には賞金を贈呈した。

優秀作品11点は以下の通り。

[ 最優秀賞 ] 1点

異常処理 あせるその手が挟まれる ゆとりをもって一呼吸

基本に従い安全作業

古河電気工業㈱・日光 鷹觜 一幸

[ 優秀賞 ] 10点

早くやるより確実に!うまくやるより安全に!過去の教訓 心にとめて

皆で作ろう安全職場

日本伸銅㈱ 井田  亘

「危ないぞ!」注意するのも思いやり みんなで守ろう仲間の安全

手順を守って安全作業

古河電気工業㈱・日光 佐藤 嘉宏

見る目 気づく目 予知する目 事前に摘み取る危険な芽

みんなで築こう0災職場

日本伸銅㈱ 塩井 秀巳

出せば はさまる危険な手 指せば高まる安全意識

古河電気工業㈱・銅管 樽谷  聡

急ぐほど 遠のく安全近寄る危険 いつも声だし指差し呼称

三菱伸銅㈱・三宝 金出 久男

あいさつが心と心の輪をつなぐ 明るく元気に声出して

今日も一日快適職場

三谷伸銅㈱ 奥本 万里子

トラブル時 手を出す前に 指差呼称 確認一つで ゼロ災害

㈱住軽伸銅 中村 和義

「まあいいか」一人のゆるみがみんなの危険 みんなでつくろう安全職場

古河電気工業㈱・日光 草間 知枝

大丈夫 思う気持ちに 油断あり 初心に返って 指差呼称

日鉱日石コイルセンター㈱ 高尾 清史

トラブル時、手を出す前にまず確認 声だし・指差し・安全ヨシ

みんなで意識 ゼロ災職場

㈱キッツメタルワークス 伊藤 正規

7.関連業種との安全交流実施

安全委員会では、従来より東西合同安全委員会の機会に伸銅業の同業事業所を訪問し安全交流を行っており、平成24年は下記の同業事業所を訪問し、安全交流を行った。

平成24年9月7日   三井住友金属鉱山伸銅㈱ 本社上尾工場

8.地区合同安全大会の開催

安全委員会では、地区安全衛生研究会との共催により関東地区と関西地区別の合同安全大会を開催し、事業所従業員への安全研修と交流を図った。

関東 平成24年2月3日(金)
中央労働災害防止協議会からの講師派遣によるKYT講習会開催。

関西 平成24年4月13日(金)
トヨタL&F近畿株式会社フリート営業部FMグループマネージャー神田政宏氏による「フォークリフト運転安全講習」開催。

(Ⅱ)平成24年の年間安全成績

1.安全成績

平成24年の安全成績は、死亡災害0件(前年2件)、休業災害25件(前年27件)、不休災害56件(前年91件)、休業度数率1.52(前年1.58)、強度率0.04(前年0.94)となった。

休業以上の災害発生件数及び度数率については、25件、1.52と共に前年(平成23年)に比べ微減に止まった。
強度率については、重大災害が発生しなかったため0.04と、大幅に低下した。
なお、不休災害の発生は56件と前年の91件を大幅に下回り、休業災害と合わせた災害合計発生件数も81件と過去のベストの平成21年の79件を2件上回る水準に止まり、3年振りに100件を下回った。

2.休業災害発生状況

平成24年に発生した休業以上の災害25件の状況は以下の通りである。

1) 傷病程度

休業以上の25件を傷病程度別に見ると、死亡0件(前年2件)、休業8日以上11件(前年22件)、休業7日以下14件(前年3件)となっている。

2) 休業日別・時間別

作業日別では、第1作業日6件(前年4件)、第3作業日5件(前年5件)、第4作業日5件(前年6件)が多くなっている。
時間別では、10時~12時7件、8時~10時6件とこの2つの時間帯合計で全体の半分が発生している。

3) 勤続年数別・年齢別

勤続年数別では、勤続年数4年未満、5年以上10年未満及び10年以上15年未満が各々4件と多くなっており、他では2年未満が3件発生している。

年齢別では、41歳以上45歳未満が8件(前年4件)と最も多く、全体の3分の1を占めている。他では18歳以上25歳未満の4件(前年1件)が特徴的である。

年齢別の千人率で見ると、66歳以上が9.17と最も高く、次いで 41~45歳の6.67、18~25歳の5.47と続いている。

また、非公式統計の経験年数別の発生状況では、4年未満が4件と多くなっており、次いで3年未満、5年以上10年未満及び10年以上15年未満が各々3件発生している。

4)原因別・部署別

25件を”動力運転災害”・”作業行動災害”・”特殊危険災害他”に分類すると、動力系13件(前年15件)、作業系9件(前年9件)、特殊災害他3件(前年3件)となっている。動力運転や作業行動系において、機械の取り扱いに起因する動くものの事故は相変わらず多くなっており、はさまれ・まきこまれ系の事故も11件(前年13件)発生している。

部署別では、製板・条が5件(前年4件)、製棒・線も5件(前年10件)と多くなっており、以下加工が4件(前年1件)、鋳造が3件(前年3件)、製管が3件(前年2件)となっている。

千人率では、製棒・線が5.57と高く、以下は加工が4.71、鍛造4.26、鋳造が3.86と続いている。

5)傷名別・部位別

傷名別では、”不完全骨折・完全骨折”が合わせて11件(前年18件)と最も多くなっており、その他では裂創が2件(前年0件)、挫滅創が2件(前年3件)、打撲傷2件(前年0件)と続いている。

部位別では、上肢部の指部が9件(前年11件)と多くなっており、次いで下肢部の足部が6件(前年4件)、上肢部の手部が3部となっている。

休業災害の傾向としてみると、”はさまれ・まきこまれ事故”による上肢部、特に手部及び指部への災害発生が明確となっている。

6)平成24年度の年齢別・勤続年数別・部署別人員構成

平成24年末現在の伸銅業の年齢別・勤続年数別・部署別人員構成を調査した。総従業員は、8,176名と前年より355名の減少となった。
年齢別で最も比率が高いのが、36歳~40歳未満の15.9%、次いで41歳~45歳未満の14.7%、31歳~35歳未満の13.6%、となっている。

(Ⅲ)まとめ

平成24年は上記の安全成績でも記したように、休業以上の災害発生件数および度数率については高水準であった前年の微減の水準に止まり、非常に残念な結果となった。伸銅品需要の落ち込みに伴う減産体制が続いた不安定な操業状況によるところも大きな要因かと思われる。
しかしながら、休業災害に不休災害を加えた災害合計件数は81件と過去のベスト(79件)に近くなっており、これまでの長きに亘る無災害に向けた実力が落ち込んだ訳ではないことを示していると考えられる。従って、今後も災害撲滅の原点に返った活動を、単年度の結果に一喜一憂することなく、粘り強く続けていくことが肝要と思われる。

こうした状況の中で、安全委員会は、平成25年度の重点方針を平成 24年度に引き続き「はさまれ・まきこまれ災害撲滅運動」とした。ヒヤリハット、KYT、リスクアセスメント等を一層積極的に職場作業の中に取入れ、さらに「設備停止による安全確保の実施と指差呼称の徹底」を実践し、伸銅品の生産に従事する全員が平成25年度の無災害の目標達成を目指していくこととする。

(平成25年の年間スローガン)
思わず手が出るとっさの動き 防ぐは日頃の積み重ね 習慣づけよう指差呼称!

以上

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